むっちゃんさん 073 | 第2回ぐるっとママ懸賞作文RSS元(カウント除外ページです)

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第2回ぐるっとママ懸賞作文RSS元(カウント除外ページです)

むっちゃんさん 073

根を張れそして、花咲かせ    
私に母を教えてくれるあなたへ。始まりの根から愛を受け、育ち、花を咲かせ。あなたの生が、いつまでも咲き誇りますように。   
 

2018年のGW明け。
私は里帰り出産をするために、臨月のお腹を抱えて実家へ帰った。
実家で出迎えてくれたのは、父と祖母。そう、じじとひばばです。
出産予定日は6月28日。夫(パパですね)は激務で出張も多く、もしものことを考えて、早めの里帰りだった。
 
私には、5歳の頃から母がいない。母の記憶はなく、自分がどんなふうに産まれたのかも知らない。どこかいつも根なし草のような……ちょっと何かあれば自分が消えてしまいそうな、そんな気持ちがしたものです。
だから私は、あなたが産まれたときのことを、本当の気持ちを、ここに書こうと思う。
あなたのルーツはここにあると、伝えたいと思う。
 
妊娠してからというもの、幸せな気持ちの裏で、私はひとり苦しんでいた。
母というものを知らない私が、子育てなんてできるだろうか。幼い子どもを置いて出ていく母の血を引く私が、ちゃんと我が子を愛することができるだろうかと。
 
産院での最後の健診で、
「いつ産まれてもおかしくない状態です」
と言われていた。今日か、今日かと待ちわび、酒好きの父もいつ陣痛がきてもいいようにと、飲酒を控えてくれていた。日付が変わった6月25日。夜中の2時から少しずつ痛みがあり、朝まで痛みに耐え、父とともに産院へ。
到着するなり助産師さんは、
「おじいちゃん(父)が立ち合いを!?」
と驚いた顔。陣痛室に通されたときには、父は待合室に通され、私は今にも産まれようとするあなたをお腹に抱え、ひとりぼっちになっていた。夫は仕事を休んでこちらに向かうとのことだけれど、到着には時間がかかるだろう。
「うぅう~いったぁ~」
あまりの痛みに、小声で唸る私。たまに様子を見に来る助産師さんが背中をさすってくれると、いくらか痛みが和らいだ。先生の
「よし、もういいでしょう」
の一声で分娩室に連れられ、激痛を経てまもなく産まれるというところでタイミングよく夫が登場。午前11時にあなたが誕生した。あなたはまず私の胸に乗せられ、夫に抱かれ、それから父に。父は
「お、俺はいいよ!」
とあたふたしていたけれど、有無を言わさず助産師さんから手渡され、おっかなびっくりあなたを胸に抱いた。
 
夫も父も、なんとも言えないくらい幸福な顔をしていた。
祖母もすぐ産院に駆け付けてくれ、初孫に喜びでいっぱいの顔だった。
義父母(おじいちゃんおばあちゃんですよ)も遠方から電車を乗り継いで駆け付けてくれ、たいそう喜んでいた。
私の友人は、駆け付けるなり泣いていた。あなたとも仲良くしてくれているTちゃんのことです。Tちゃんは泣きながら私と抱き合い、あなたの写真をスマホに大量におさめて帰った。

どこもかしこも痛い、なかなか母乳も出ない。初めての育児は大変だったけれど、ひとりの人間の誕生を、これだけ多くの人が喜び、愛し、その幸せを願ってくれる。その喜びの源を、私がこの手で育てていけるのだ。こんなに幸せなことがあるだろうか。
隣で眠るあなたの顔を見ながら、そう思った。
 
私は母を知らない。良い母になれるかどうかはわからない。
でも、私がしてほしかったことをあなたにしてあげたいと思う。
完璧な母になれなくても、あなたがもういいと言うまで、あなたのそばにいる。
誕生日にはお祝いをして、季節ごとのイベントを一緒に楽しんで、授業参観には少し気合を入れて綺麗にして行って、運動会にはあなたの好きなものをたくさん詰めたお弁当を持って。あなたが悩んでいるときはともに悩み、嬉しいときはともに喜び、悲しいときは寄り添い、あなたの人生を応援する。
 
私に、母というものを教えてくれてありがとう。
あなたが産まれてきてくれて、私はとても幸せです。
どうしようもなくつらいことがあったときは、どうか、この根っこを思い出して。
あなたは多くの喜びをもたらし、愛される存在なのだということを。

このページは、ぐるっとママ12地域へ投稿する応募作品のコピー元となるページです。

このページの応募作文に「♥いいね!」を押してもカウントされませんのでご注意ください。

CALENDARカレンダー

  • 2024年11月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

CATEGORY記事カテゴリ

NEW新着記事