永野 夏帆さん 010 | 第3回ぐるっとママ懸賞作文RSS元

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第3回ぐるっとママ懸賞作文RSS元

2024.09.27

永野 夏帆さん 010

娘に伝えたいこと。
私たち夫婦のもとに来てくれて、本当にありがとう。あおいくんをお兄ちゃんにしてくれてありがとう。私をお母さんにしてくれてありがとう。


どれほど年齢を重ねても。私が私の出産を振り返ったときは、変わらず涙を流しているのだろう。

2019年6月、私は母親になった。なってしまった…という言葉が合っている気がする。トツキトウカという時間は、生きた心地がしなかった。想像していた妊娠生活とは程遠く、泣かない日はなかった。生まれてきた息子は、生後半年で障害者手帳1級を取得した。

5年間の息子と夫と私の3人暮らしは私の人生を大きく変えていった。障害のある息子は、可哀想な子と扱われるのではないかとずっと不安だった。保育園に通えるようになり、デイサービスにも居場所を見つけて、息子は沢山笑うようになった。それを見た夫はすごく嬉しそうに、幸せそうに息子を抱きしめていた。置いていかれてるのは母親の私だけなのだとますます自分にがっかりした。
障害のある子どもを可哀想な子と思っていたのは私だったのだ、そう気づくことに時間はかからなかった。

息子の悲しみを埋めたくてに第二子を考えるようになった私に、夫はこう言った。
「俺はすごく幸せだよ。息子と私が居てくれて。立ち止まってしまうことも落ち込むことも当然のことだけど、息子はゆっくりだけど成長してるよ、一生懸命生きていることに気づいてあげてほしい。」

変わらなければならないのは、私だ。
周りの人たちに起こる明るい出来事が喜べなくなって、友人たちと少しずつ距離を取るようになった。自分が一番不幸なんだと思える環境を作っていくようになっていた。

そんな自分を、どう変えていけばいいのか分からず、まずはイベントに参加することにした。すると、驚くことに言葉を話せない息子が、私と人とを繋いでくれた。クラスにいるムードメーカーかのように、知っている人にニコニコと笑いかける息子をみて、馴染めていないのは私の方だと気づかされた。

息子のお陰で先輩ママとランチに行くようになった。困っていることを話せるようになった。すると最近明るくなったねと夫に言われた。意識していたわけではなかったけれど薄々自分でも感じていた。息子のことで悲しんでいたはずなのに、息子が繋げてくれた人たちのおかげで心が救われた。

私は、人にありがとうを。温もりを。
与える人にはなれないのかもしれない。
誰かの喜びを共に喜べる人間ではないのかもしれない。私が経験した初めての出産は、これまでの自分自身を全て疑ってしまうほど、衝撃的で悲しみに包まれたものだった。

そこから抜け出すまでに、夫や両親にはどこまでも支えてもらったし、息子を通じて知り合った人たちには愛を沢山教えてもらった。そして、人にはそれぞれの人生に必ずドラマがあることを初めて知った。

「おめでとうございます。」
2024年の8月、不妊治療を経て私は娘を出産をした。母親になることが怖かった数年前には想像もできないことだった。

彼女を妊娠するまでの時間の中で、人との繋がりが、自分の心を強くしてくれるのだと知ることができた。
そして、幸せだと思えるかどうかは、自分の心が決めることなのだと気づくことができた。

娘が生きていく人生に、どんなことが待っているのか。楽しいこと、幸せなことで溢れてほしいと願うけれど、きっと悲しい事も経験していく。その時に母親の私にできることなんて、小さな事でしかないのだろう。

どんな時間も、彼女自身にありがとうの気持ちを持ち続けてほしいと願っている。誰かに感謝を伝える事が出来ないような時間を過ごすこともあるかもしれないけれど、また勇気を持って伝えられる日が来てほしい。

そんな願いを込めて
『礼』
と名付けた。

COMMENTコメント

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してぐるっとママ横浜は一切の責任を負いません

CALENDARカレンダー

  • 2024年10月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

CATEGORY記事カテゴリ

NEW新着記事