肥満の蔓延は気候変動の一因か | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2020.05.07

肥満の蔓延は気候変動の一因か



科学的栄養学 No.104

◇肥満の蔓延は気候変動の一因か

 

 

緊急事態宣言の期間が延長され、外出自粛で不自由な生活が長引く中、気分もめいりがちになります。そんな気分すこしでも和らげられればと、今回はエッ本当〜?? 

思わずちょっと笑ってしまいそうな、でも本気の論文を見つけましたので紹介します(^_-)-☆。


これは、世界的な肥満の蔓延は温室効果ガスの排出量を増やし、気候変動の一因となっている可能性を指摘する研究報告です。

 

コペンハーゲン大学(デンマーク)のFaidon Magkosらは、研究結果から「肥満を減らすことは罹患率や死亡率の低減、医療コストの削減に有益なだけでなく、地球環境にも好ましい影響を与える可能性があることを示唆するものだ」と説明しています。

 

論文によれば、酸素に依存して生きる他の生物と同様に、ヒトは生命を維持するために必要な代謝プロセスによって二酸化炭素を産生する。

 

ある生物種が産生する二酸化炭素の排出量は、その種の平均的な代謝率や体のサイズ、個体の総数によって決まるとされる。

 

そこで、著者らは今回、さまざまな産生源からの温室効果ガスの排出量に関するデータを分析。その結果、肥満の人は、適正体重の人よりも、二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出量が最大で20%多いと推定しています。

 肥満の人は、体重を維持するためのエネルギー消費量が多く、より多くのエネルギーを摂取する必要があるので、肥満の人が増えると、食料の生産量と輸送のための燃料の使用量も増加すると。

 

さらに、肥満の人が自動車や電車、飛行機などを使って移動する際にも、より多くの燃料が必要になるという。

 

著者らは「肥満は食料生産とその輸送を増やし、結果として温室効果ガスの排出量を増加させる一因となっている」と説明。その上で「肥満の影響で、世界中では年間約700メガトンもの余分な温室効果ガスが排出されている可能性がある。

 

これは世界の温室効果ガス排出量全体の約1.6%に相当する」と説明しています。


論文によれば、今回の研究結果は、肥満治療に関わる全ての人にとって重要な意味をもつという。

 

一方で、「この結果を受けて、既に差別や偏見に直面している肥満の人々に対し、さらなる非難を浴びせることがあってはならない」と著者は強調している。

 

今回の研究には関与していない、健康と肥満への健全なアプローチを探求する活動組織「ConscienHealth」の創設者であるTed Kyle氏は、「この研究結果から、適切な肥満治療を受けられる環境が整備されなければ、法外な代償を伴うことが明らかになった。

 

肥満は、その人の健康を損なうだけではなく、適切なケアを受けなければ地球規模の環境問題にも影響を与える可能性がある」と述べています。

 

なんとも笑えるようで真面目な研究で何か納得してしまうような報告でしたね(^^)/

 

 

原著論文はこちら

Magkos F, et al. Obesity (Silver Spring). 2020; 28: 73-79.

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