大気汚染による高齢者への深刻な健康被害に警鐘 | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2019.09.20

大気汚染による高齢者への深刻な健康被害に警鐘

科学的栄養学No.72

 

◇大気汚染による高齢者への深刻な健康被害に警鐘

 とくに慢性閉塞性肺疾患COPDと虚血性心疾患!!

 

COPD:性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称。

 タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病。

 

大気汚染が大きな社会問題としてこれまでも論議されてきたことは周知の事実。

 

大気中の汚染微粒子状物質への暴露による冠動脈疾患への影響に関してもすでに多くの報告がみられます1,2)

 

わが国も大気汚染による健康被害の先進国としてこの問題に取り組んできた経緯がある。

 

今日、急激に工業発展を遂げている地球の工場と化している中国の大気汚染は地球環境の崩壊につながりかねない深刻な問題である。

 

Lancet誌のオンライン版2017125日号に掲載された英国国立心臓・肺研究所のRudy Sinharayらにより報告された無作為化クロスオーバー試験は大気汚染による健康被害に警鐘を鳴らす、高齢者に的を絞った時宜を反映した興味深い論文がありましたので私の見解のコメントも含めて紹介します。

 これまでの研究によれば大気汚染による長期暴露が
COPD患者の肺機能を悪化させ、短期であっても高汚染度大気への暴露は虚血性心疾患、COPDによる死亡を増加させることはすでに報告されている3)

 

本研究は、60歳以上の血管造影を受けた対象者中、安定虚血性心疾患と診断された患者またはGOLD基準ステージ26ヵ月間病態が安定なCOPD患者と年齢をマッチさせた健康ボランティアをコントロールとして無作為クロスオーバー試験を行った。

 

12ヵ月以上禁煙継続中で、かかりつけ医師の指導下で投薬は継続された。

 

被験者をロンドン中心部の商業地域(オックスフォード・ストリート:大気高汚染地域)と都市公園内(ハイドパーク:大気低汚染地域)の2群に無作為に振り分け2時間ずつ同様のウォーキングを実施。黒色炭素、微小および超微小粒子状物質、二酸化窒素を測定した。

 その結果

COPD患者では咳が2倍、喘鳴が4倍に増加したとのこと。

 

被験者はCOPD患者40例、虚血性心疾患39例、健康ボランティア40例で、黒色炭素、二酸化窒素、PM10 PM2.5、超微粒子らの濃度は大気高汚染地域で低汚染地域に比べいずれも高値を示した。

 

COPD患者では大気高汚染地域のウォーキング後、低汚染地域に比べ各オッズ比は咳:1.95p0.1)、 喀痰:3.15p0.05)、息切れ:1.86p0.1)、呼気性喘鳴:4.00p0.05)と増加した。

*オッズ比生命科学の分野において,ある疾患などへの罹りやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である.オッズ比が1とは,ある疾患への罹りやすさが両群で同じということであり,1より大きいとは,疾患への罹りやすさがある群でより高いことを意味する.逆に,オッズが1より小さいとは,ある群において疾患に罹りにくいことを意味する.例えば,ある多型が疾患群100名中の40名で,健常群100名中の20名で認められたとする.このオッズ比は,(40/60)/(20/80)=2.67となる.これは,ある多型において疾患群で出現するリスクが健常群に対して2.67倍高いこととなる.(2008.2.26 掲載)[FYI用語解説(ファルマシアVol.43,No.10)より転載]

 

疾患の有無を問わず被験者全員で大気高汚染地域よりも低汚染地域のウォーキングで肺機能(1秒量、努力肺活量)の改善を認め、脈波伝播速度(PWV)、増大係数(AI)の減少が最大26時間にわたり持続した。

 一方、大気高汚染地域のウォーキングでは
COPD患者で1秒量、努力肺活量の増加がともに低汚染地域と比べ低下し、5Hzでの呼吸抵抗(R5)、20Hzでの呼吸抵抗(R20)の増加も低下し、ウォーキング中の二酸化窒素、超微粒子、PM2.5の濃度上昇との関連を認めた。

 

PWVAIの増加も二酸化窒素や超微粒子の濃度上昇と関連していた。

本論文から、大気汚染による影響は病人に限らず、健康人にさえ健康被害をもたらすことが明らかになり、大気汚染が万人の健康被害の原因となることが判明した。

 

また、地球の大気汚染問題は真剣に取り組まなければ人類存亡の危機につながりかねない大問題に発展する可能性を秘めた内容であり、人類の責任において大気の浄化に専念することの重要性を強調している。

 

言い換えれば、大気汚染、環境汚染は悪性腫瘍、血管障害などにより人類滅亡の危機を招く重大原因となり得る可能性に警告を発しているとも理解できる。

 

私が、伝えている「脳環境科学経皮毒」の正しい情報にふれ、知識を集積することで自身のからだの環境を守るための生活習慣、食習慣、日用品の選び方や使い方などの考え方がかわり、行動の選択が変わっていきます。

 

つまり、まずは、自身のからだの環境を守る意識が、身近な大切な家族や仲間のからだの環境を守る意識へと拡大され、しいては地域、社会へとインサイドアウトな広がることが、やがては地球環境を守る行動につながっていく早道なのです。

 

地球環境汚染対策に関する世界的な基準つくりや、各国の諸政策ももちろん大事ですが、なによりも大切なことは自身でできること、すなわち、余計な環境化学物質に曝露しないように、取り込まないようにする知恵ある賢い生き方をすることです。

 

まずは学ぶことで一人の意識変革、行動変革がすべてにつながっていくと確信しています。

 

 

参考文献

1Cesaroni G, et al. BMJ. 2014;348:f7412.

2Brook RD, et al. Circulation. 2010;121:2331-2378.

3Peacock JL, et al. Thorax. 2011;66:591-596.

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