妊娠中は食物繊維の摂取を増やそう! 妊娠中にとる食物繊維が少ないと赤ちゃんが肥満になりやすい?   | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2021.01.14

妊娠中は食物繊維の摂取を増やそう! 妊娠中にとる食物繊維が少ないと赤ちゃんが肥満になりやすい?  



科学的栄養学No.138

◇妊娠中は食物繊維の摂取を増やそう!

 妊娠中にとる食物繊維が少ないと赤ちゃんが肥満になりやすい?

 

最近話題になっている「腸活」。なかでも重要のが食物繊維です。
 

最新の研究から、妊婦が食物繊維をしっかり摂取すると、自身の健康だけでなく、赤ちゃんの健全な臓器形成や肥満リスク低下など、生まれてからの健康向上役立つとということが分かってきました。

 

肥満や生活習慣病については、どうしても食生活や運動習慣による影響ばかりが重要視されがちですが、実は生まれる前からの母親の食生活そのものが、子どもの健康に大きな影響を与えているようなのです。

 

今回は、妊婦が食物繊維を多く摂取していると、生まれてくる子どもの将来の肥満やメタボリックシンドロームのリスクが減る可能性がある、という内容をお伝えします。

 

この研究は、東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究チームによるものです。

 

 動物実験は、妊娠したマウスを2群に分け、一方の群には食物繊維の少ないエサを、もう一方には水溶性食物繊維(高食物繊維食)を与えて飼育。

その後、両群から生まれた子どもマウスにはいずれも離乳後高脂肪食で飼育。

 

その結果、食物繊維の少ないエサを食べていた母親から生まれた子どもマウスは成長するにつれて肥満に
 

逆に、食物繊維を多く含むエサを食べていた母親から生まれた子どもマウスは、明らかに肥満が抑えられたというのです。
 

この結果と関連した研究で、腸内細菌を持たない無菌妊娠マウスに食物繊維を多く含むエサを与えても、生まれた子どもは低食物繊維食の母親から生まれた子と同じように重度の肥満になったという報告があります。

 

このことは、子どもの成長の仕方や将来の体形に、母親の腸内細菌が関与していることを示しています。

 

事実、食物繊維を多く与えた母親マウスの腸内では、食物繊維を腸内細菌が分解して増える短鎖脂肪酸が多く産生されていました。

 

さらに、その関連性を調べるため、無菌マウスや低食物繊維食の妊娠マウスのエサに短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸という成分を加えたところ、生まれてきた子どもは、高脂肪食を食べ続けても肥満が抑制されたというのです。

これは、大変に興味深い結果です。

 

なぜなら、腸内細菌が食物繊維を食べて作り出す短鎖脂肪酸が、子どもの肥満の抑制に関わっていることを示していると考えられるからです。

 

木村教授らの研究では、これまでに胎児の時点で腸や交感神経、膵臓などの臓器に、短鎖脂肪酸のセンサー(受容体)が多く存在することをすでに確認しています。

 

胎児の臓器や神経に短鎖脂肪酸の受容体が多く存在すると、その子のエネルギー代謝を整えるという重要な意味を持つことになります。木村教授は胎児は基本的に腸内細菌を持たず、お腹の中では食事もとらない。おそらく、母親の腸内で作られた短鎖脂肪酸、または何らかのシグナルを血液や胎盤を介して胎児が感知するために、胎児期においても既に短鎖脂肪酸の受容体が存在しているのではないかと述べています。

 

また、実験から受容体が短鎖脂肪酸を感知して活性化すると、神経や腸、膵臓などの臓器の細胞の分化が促進されることも確認済み。

そのため、木村教授はこれは、母親の食物繊維摂取が子どものエネルギー代謝を整えるだけでなく、胎児期における臓器の発達にも関わることを示唆するものとも述べています。

 

従来、胎児のために妊娠中の摂取が重要視されてきた栄養素は鉄や葉酸、亜鉛、たんぱく質などでしたが、新たに食物繊維も、子の発達形成において重要な役割を担う可能性が示唆されたといえます。

 

食物繊維は水溶性と不溶性に大別され、腸内細菌が代謝しやすいのは水溶性食物繊維。

 

この研究に対して、 「高食物繊維食を食べた母親の腸で増えた“太りにくい腸内細菌”を、胎児がお腹の中で直接受け継いだことで、子どもの腸で太りにくい腸内細菌叢が形成された可能性もある」との可能性を語るのは子どもの成長と腸内細菌の関係に詳しい、東京女子医科大学小児科学講座の永田智教授。

 

 つまり、母親が高食物繊維食を食べることで出来上がった太りにくい腸内細菌叢を、生まれてきた子どもが受け継ぐ可能性があるとうこと。

 

では、自裁にとるべき食物繊維量はどのくらいなのだろうか。

米国やカナダでは「成人で1日当たり24g以上」としている。一方、昨年春、改定された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性で21g以上、成人女性で18g以上と。つまり、日本では食事摂取基準で定められた目標量をとっても、まだまだ足りていない可能性もあります。

 

 自身の健康はもちろん、生まれてくる子どもが健やかに育つためにも、妊娠中は日ごろの食事からの食物繊維の摂取を意識して増やすとよさそうですね。

 

私が提唱した「経皮毒」でも、妊娠中のお母さんが使用した日用品に含まれている環境化学物質が、胎児の様々な遺伝子発現に影響を与える可能性があることを指摘しておりますが、栄養面でも同じようなことが考えられるということで、興味深いことです。

 

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