新型コロナの重症度、致死率はどれくらい? 最新報告から見えてきた現状について | 薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

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薬学博士 竹内久米司さんからのアドバイス

2020.02.19

新型コロナの重症度、致死率はどれくらい? 最新報告から見えてきた現状について

科学的栄養学No.93

◇新型コロナの重症度、致死率はどれくらい? 最新報告から見えてきた現状について

 

感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルス(COVID-19)は、日本国内でも感染源の分からない(感染者や武漢渡航歴のある人との接触歴が不明な)市中感染の報告が出ました。

 

2月13日には、わが国で初の死亡例(神奈川県の80代女性)も確認され、不安が全国に伝わりました。

 

 一方で、このウイルスに感染した患者がどのような症状を経験し、どのような経過をたどるのかという情報も少しずつ蓄積されてきました。

 

今回紹介するのは、中国における新型コロナウイルス感染症患者1099人の臨床経過を報告した最新の論文と、2月13日に横浜市で開かれた新型コロナウイルスに関するメディア・市民向けセミナー(主催:日本感染症学会、日本環境感染学会、FUSEGU2020)の講演内容を基に「新型コロナウイルスに感染すると、どのような症状が現れ、どのくらいの人が重症化し、命を落とすのか」について、現時点での情報をまとめてお伝えします。

 

 中国における最新の論文は、中国の31省552病院で、2020年1月29日までにCOVID-19感染が確認された急性呼吸器疾患患者1099人の経過をまとめたもの(*1)。

通常、医学論文は、専門家による査読を経て医学ジャーナルに掲載されますがこの報告は、最新知見を迅速に共有することを目的に査読なしの論文として掲載されたものです。

 

 今回発表された論文の特徴は、重症例を中心とした従来の報告(*2、*3)に比べて対象患者数が多く軽症例も多数含まれていることです。

 

1099人のうち、受診時に重症と診断された患者は16(173人)非重症と診断された患者は84(926人)で全体の82%が入院しました。肺炎の重症度は、米国胸部疾患学会/米国感染症学会の基準(*4)に基づき敗血症性ショック、呼吸不全、錯乱・見当識障害、白血球減少、低体温血圧低下など11項目の該当数から判定されています。

 

 感染から発症までの潜伏期間は中央値で3日です。
症状として最も多く見られたのは発熱で、入院時は43%でしたが、入院中は88%に増加。

 

次いでが68%、倦怠感が38%、が33%に認められ息切れ、筋肉痛・関節痛、咽頭痛、頭痛、悪寒と続きました。消化器症状(嘔吐、下痢)はそれぞれ4~5%にとどまりました(図1)。

 

*1 Guan W, et al. Medrxiv, doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.06.20020974
*2 Huang C, et al. Lancet. 2020 Jan 24. pii: S0140-6736(20)30183-5. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30183-5
*3 Li Q, et al. N Engl J Med. 2020 Jan 29. doi: 10.1056/NEJMoa2001316.
*4 Metlay JP, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2019; 200:e45-e67

 

1099人の感染者のうち、胸部レントゲン写真で異常が見られた人は15%でしたが胸部CTでは76%に異常が見つかりました。

つまり、「通常のレントゲン写真では異常がはっきりしないが
CTを撮ってみると肺炎像などが見つかるケースが多い」ということです。

胸部
CTで異常が見つかった人の約8割は受診時に非重症と判定された患者でした。

 

 セミナー登壇者の1人で、国内の新型コロナウイルス感染症患者の治療に当たっている国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志氏は
「新型コロナウイルスによる肺炎患者は、肺の胸膜に近いところに薄い影が現れることが多く胸部レントゲン写真では判断が難しいケースが多い」とした上で「この報告で、レントゲンでは異常が見られず胸部
CTで肺炎像が見られた患者の中に自然に良くなる軽症患者も含まれている」との見方を示し「レントゲン検査で異常がなくても全員に胸部CT検査をすべき、という話ではまったくない」と述べました。

 

 重症例の患者は、非重症の患者に比べて年齢が高く(中央値は重症例52歳、非重症例45歳)高血圧24%)、糖尿病16%)、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など、6%)COPD(慢性閉塞性肺疾患、4%)の持病が有意に多いという特徴がありました。

 

 発症から肺炎と診断されるまでの日数は4日(中央値)、酸素投与が必要になった患者は38">%いました。

気管内挿管による人工呼吸管理が行われた患者は
2%で「気管内挿管が必要になるほど重症化する肺炎はかなり少ないと言っていいのではないか」と忽那氏は話しました。

この報告における死亡例は
15人でした致命率〔致死率〕1.4%)

 

 2月14日現在、世界の新型コロナウイルス感染症の患者は6万4000人を超え死亡例は1383人になりました(致命率2.1%)。

忽那氏は「新型コロナウイルス感染症は
">SARS
と比べると感染者は非常に多いが(SARSの感染者は8096人)致命率はずっと低い(SARSによる死亡者は774人で致命率は9.6%)。

今後、もっと軽症の患者を診断できるようになると、見た目の致命率はさらに下がっていくだろう」との見方を示しました。

 

 新型コロナウイルスに限らず、多くの感染症は、感染しても症状が出ない人(無症候性感染者)や症状が出ても自然に治るなどして、確定診断されていない人が多数存在するとみられています。

医療機関で新型コロナウイルス感染症と診断される人は、氷山の一角にすぎません(図2)。


 

こうした人たちも含めれば、真の致命率はさらに低いものと思われます。私たちは連日報道される患者数や重症例の報告を、こうした背景を踏まえながら、冷静に受け止める必要があります。

 

「現時点ではっきり分かっているのは、高齢者や持病のある人は、新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいということ

また、これまでの感染症に照らし合わせると、免疫不全のある人や妊婦なども重症化しやすい可能性があるので
注意していく必要がある」と忽那氏は強調します。


 国レベルでは今後、検査体制の拡充や、医療機関や介護施設での感染対策の徹底など
取り組むべき課題が山積していますが、私たち一人ひとりは、これまで同様、できるだけ人が集まる場所を避け
手洗い、アルコール消毒、マスク、換気
などで感染予防に努めることが大切です。
もし風邪のような症状が出た場合は、たとえ症状が軽くても外出を控え、極力人との接触を避けて
療養に努めることが、感染の拡大防止、ひいては、ハイリスクの人たちの重症化や死亡を極力減らすことにつながるといえるでしょう。


 たとえ致命率が低くても、感染者が増えれば増えるほど、重症者や死亡者の数は増えてしまいます。
自分自身を守るだけでなく、周囲に感染を拡大させないための配慮がこれまで以上に求められています。

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