イソカカさん「16歳になるつむぎへ。」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

イソカカさん「16歳になるつむぎへ。」

『あなたが産まれてきてくれたから、ママは強くなれました。』


むぎ、あなたの誕生日が来る前にやっておきたい事がある。10年後のあなたがこれを読んで、どんなにあなたが私を救ってくれたのか、知って欲しい。

今日は2021年9月14日。あなたの6歳の誕生日の前日だよ。あなたはすみっコぐらしのケーキが食べたいと私にねだってきてる。可愛いおねだり、もちろん予約したよ。きっとあなたは明日、にこにこ笑ってママ大好き!と言ってくれる。

2016年の9月14日はね、いいお天気だった。いつも通る鴨川があるでしょう。川がキラキラ輝くのをお母さんは歩きながら眺めてた。産婦人科でよく歩くように、と言われたんだ。あなたがもうすぐ産まれてくる、それが嬉しかった。

あなたがお腹に入っている頃、ママとパパは飲食店をやっていてね、忙しかった。お兄ちゃんを朝保育園に預けて、ギリギリの時間にお迎えして、お客様にご飯を作るのに、家族のご飯は作れない、それくらい疲れちゃう時もあった。

そう、忙しかったから。ママは無理をした。
そんなつもりじゃなかったけど、動きにくい位大きくなったお腹で、いっぱい働いた。そしたら高い熱がでて、病院に入院することになってしまった。あなたの命が危なかった。
お風呂はだめ、トイレのために起き上がるのもだめ、ご飯は寝たまま食べなさいと言われた。
悔しかった。お店をパパに任せて、病院のベットで1日を過ごすのは、前日までの充実した日々との落差が大きすぎた。

こう書くと、もしかしたらあなたは申し訳無い気持ちになってるかな?むぎ、違うの。よく聞いてね。

ママはあなたが生まれたおかげで、受け入れる強さを持てたの。

この力はお母さんの1番最高な誇りなんだ。だからよく知ってほしい。
あなたがどんなに素晴らしいのかを。


負けず嫌いのあなただから、きっとこれまで1番になろうと、運動も勉強もよく頑張ったことでしょう。でももしかして、身体の変化に戸惑ったり、心がなんだかもやもやとして、うまくいかない時があるんじゃない?
それはあなたが大人になるのに必要なものだよ。

自分の力だけでどうしようもないことって、この先沢山ある。それはお友達との関係や、社会のあり方だったりする。
自分の事だってうまくコントロールできなくて、人に助けてもらう時がある。ママも助けてもらってきたんだよ。

だけどね、随分長い間、ママはなんでも自分でどうにかしたかった。うまく周りの人にお願い出来なかった。
それが変わったのが、あなたを妊娠してからだった。
自分が動けなくなって、本当に大切にしなきゃいけないものが見えてきた。自分で出来ないからこそ、沢山ありがとうを言葉にするようにした。最初は口だけで、本当は自分がしたいのにって気持ちが溢れてたかもしれない。でも、1番大切なあなたの命を守るために、ママは自分で出来ないことを受け入れたんだよ。そしたらびっくりする位心が穏やかになって、人にありがとうを言えるようになった。
これって、ママの人生を変えた力なんだよ。

受け入れる強さってね、諦めることとは違うんだ。出来ないことを認めて、周りに感謝して頼って、自分に出来ることを精一杯やる。そういう強さだよ。これってね、きっと色んなママたちが、子育ての中で身につける強さなんだ。

こうでありたい。そう思う気持ちは尊いものだよ。でも同時に、今、ここにあるがままのあなたが素晴らしいことを知って欲しい。

あなたが生まれた時の写真がある。ママの顔はお化粧もしてなくて、寝てなくて、でもにっこにこの笑顔なの。お化粧してない顔を写真に撮られるのなんて、ありえない!って思ってたんだ。でも受け入れて、この瞬間を残しておく方が大切だと思った。いつかあなたが生まれた日のことをふと知りたくなった時、どう見たってママは幸せです!!!ってすぐ分かるように。
むぎ、あなたが生まれてきたおかげで、ママは強くなれたよ。ありがとう。お誕生日、おめでとう。

 

京都府 イソカカさん
題名:16歳になるつむぎへ
子どもへ伝えたい言葉:「あなたが産まれてきてくれたから、ママは強くなれました。」